【ETC障害】NEXCO側の瑕疵による障害!賠償は請求できるのか?
2025年4月初旬、NEXCO中日本のETCシステムにおいて前代未聞の大規模障害が発生し、約92万台の車両が料金所にて適切な料金支払いができないという深刻な事態となりました。
この障害は、単なる技術的不具合にとどまらず、社会的な混乱や制度的な課題も浮き彫りにすることとなりました。
多くの利用者が困惑し、不満や不信感を抱いている中で、果たしてNEXCO側に賠償責任はあるのか。
損害賠償を求めることは可能なのか。本記事では、その法的側面と今後の展望を含めて詳しく解説します。
損害賠償を求めることは可能なのか?
ETC障害の概要と背景
ETCシステムの中枢に位置する通信サーバーに障害が発生したことで、料金所の自動ゲートが一斉に開放され、料金が徴収されないまま車両が通行するという異常事態が発生しました。この影響で、料金所の混雑や運用の混乱だけでなく、後日の未収料金の通知や支払い対応といった二次的な混乱も続出しました。
NEXCO中日本は公式サイトを通じて、対象となる利用者に対し順次支払いのお願いを通知する対応を取っていますが、その対応の遅れや不透明さがさらなる混乱を呼んでいます。原因としては、システムメンテナンス時の設計ミスやバックアップ体制の不備などが指摘されています。
NEXCOの責任と供用約款の解釈
NEXCO中日本の「供用約款」第10条には、次のように明記されています。
しかし、NEXCO側は今回の障害について「偶発的な技術障害であり、瑕疵には当たらない」との立場を取っており、法的解釈を巡る争点が予想されます。

https://www.c-nexco.co.jp/corporate/ir/
関連リンク:NEXCO中日本公式サイト – ETCに関するお知らせ
利用者が被った可能性のある損害
ETC障害により、利用者には次のような多様な損害が発生したと考えられます。
・ビジネス利用者における納品遅延や遅刻による業務損失
・精神的ストレスや不安感の増大
・通信トラブルによる誤請求、二重請求による金銭的被害
・請求内容の照合や異議申し立てなどにかかる時間と労力
また、高齢者やITリテラシーの低い層にとっては、後日の請求対応や問い合わせの手続きが煩雑で、より大きな不利益となっている可能性もあります。
賠償請求の実際と課題
法律上、賠償請求を行うには以下の条件を満たす必要があります。
・その損害がNEXCOの過失、または供用約款における瑕疵によるものであるという合理的説明
現時点では、NEXCOが障害の詳細な調査結果や再発防止策を公表していないため、利用者側が個別に賠償請求を行うにはハードルが高いとされています。しかし、SNSや弁護士ドットコムなどを通じて、集団訴訟を検討する動きも出てきており、今後の展開に注目です。
「不正通行にはならない」ETC障害で国交相、刑事責任に問われる可能性を否定 NEXCOは「お支払いを」 どういうことなのか?
NEXCO中日本の供用約款には「高速道路の設置又は管理に瑕疵があったために利用者に損害を生じたときは、会社は、これを賠償する」(第10条)という条項があり、さらに利用者側にも責任がある免責事項も定めています。免責事項があれば、同社による賠償を減額するという内容です。ただ、この中にシステム障害を免責する規定はありません。9日の同社会見で縄田氏は供用約款に基づき請求すると説明しました。
これについて、中野国交相は11日の閣議後会見の中で言及しています。
「約款上の取り扱いで(高速道路会社の)賠償になる原因が何かということで、瑕疵(かし)があるときとなっている。一般的には道路構造物の損傷など物理的な瑕疵を想定して賠償するという項目があると聞いている(というNEXCO中日本の説明)。原因究明を進めているが、広域的なシステム障害時の料金の取り扱いについて明確な規定がないことも課題と認識している。そういう意味で広域的なシステム障害時のマニュアルを早く作成するようにと指示した。有識者委員会では料金の取り扱い、瑕疵について、しっかり整理していくものだと考えている」
また、合わせて有料道路課は、次のような見解を示しました。
「約款上は(賠償において)システム障害が除かれるという明確な書き方はしてない。繰り返しになるが、NEXCOが想定しているのは道路構造物の損傷による瑕疵。具体的な取り扱いは、今後の有識者の検討委員会で含めて議論されると聞いている」
結局、NEXCO中日本の料金請求の根拠は、約款になくても同社の解釈次第、ということになるのでしょうか。供用約款に基づき請求を続けるとした同社にも、根拠となる条文について尋ねましたが、現状で回答はありませんでした。
出典:「不正通行にはならない」ETC障害で国交相、刑事責任に問われる可能性を否定 NEXCOは「お支払いを」 どういうことなのか? – (2) | 乗りものニュース
<<<賠償請求は可能か?>>>
(第10条)という条項があり、さらに利用者側にも責任がある免責事項も定めています。免責事項があれば、同社による賠償を減額するという内容です。ただ、この中にシステム障害を免責する規定はありません。
「約款上は(賠償において)システム障害が除かれるという明確な書き方はしてない。繰り返しになるが、NEXCOが想定しているのは道路構造物の損傷による瑕疵。具体的な取り扱いは、今後の有識者の検討委員会で含めて議論されると聞いている」
NEXCO中日本の料金請求の根拠は、約款になくても同社の解釈次第になる。
*上記内容は、中野国交相による閣議後の会見を一部抜粋。
国の対応と制度的見直し
国土交通省は今回の障害を受けて、ETCの障害発生時におけるガイドラインや、料金の後日請求処理に関する透明性の確保を課題と位置づけています。
特に、広域障害時の制度的対応や、ユーザー保護の観点からの約款見直しが求められており、関係省庁を交えた有識者会議の設置が予定されています。
また、ETCシステムにおけるデジタル管理の一元化とバックアップ体制の再構築、ユーザー通知の迅速化などが重要なテーマとして取り上げられています。
特に、広域障害時の制度的対応や、ユーザー保護の観点からの約款見直しが求められており、関係省庁を交えた有識者会議の設置が予定されています。
まとめと今後の展望
今回のETC障害は、単なる一時的な技術的問題ではなく、高速道路の信頼性や公共インフラの管理体制に関する根本的な問題を投げかけています。NEXCOの対応の透明性や誠実性が今後の信頼回復の鍵となります。
利用者としては、自身が影響を受けた事実を記録・保存し、必要であれば法的手段も視野に入れることが重要です。特に、複数回の通行履歴や請求内容が不明瞭な場合は、問い合わせを怠らず、文書での対応履歴を残すことが望ましいです。
今後、集団訴訟や国による制度見直しの動向に注目が集まり、同様の事態を未然に防ぐための制度整備と技術対応が急務とされるでしょう。
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