【7月5日】NASAが認めたフィリピン沖の隕石落下は本当?
最近、SNSや動画サイトで「2025年7月5日にNASAが予告した隕石がフィリピン沖に落下する」という噂が急速に拡散しています。しかし、結論から言うと、この情報には科学的根拠がなく、NASAやJAXAなど公的機関も認めていません。
話題のきっかけは「予言本」とSNS
この噂の元になったのは、漫画家・たつき諒さんが出版した『私が見た未来』という本の中の「2025年7月5日に大災害が起きる」という夢の記述です。この内容がSNSやYouTubeで取り上げられ、一部の人々が「NASAも認めている」と話を大きくして拡散したと言われています。
実際、現時点でNASAはそのような隕石落下予測を公式に発表していません。フィリピン政府やESA(欧州宇宙機関)も同様です。
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噂の発端は、漫画家・たつき諒さんの著書『私が見た未来』に記された「2025年7月5日に大災害が起きる」という夢の記述。
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元々は個人的な夢の記録であり、科学的根拠を伴うものではない。
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SNSやYouTubeで「この日付が危ない」という不安が拡散し、一部では「NASAも認めている」と話が大きくなった。
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実際には、現時点でNASAはそのような隕石落下や災害予測を一切公式に発表していない。
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NASAの「センチネル計画」や「Sentry Impact Monitoring System」でも2025年7月5日前後に衝突予定の天体は確認されていない。
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フィリピン政府やESA(欧州宇宙機関)も同様の警告や予測を発表していない。
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たつき諒さん自身も「夢は未来を保証するものではない」と何度も公言している。
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SNSでは「NASAやESAも危険視している」という根拠のない噂が繰り返し引用・拡散されている。
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こうした不確かな情報は、防災意識とは別に心理的混乱や不安を助長する恐れがある。
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現時点でこの噂には公的機関の裏付けも科学的根拠も存在しない。
NASAが確認している事例は「小隕石の落下」
NASAやESAが過去に公表した「フィリピン沖での隕石落下事例」は、2024年9月にルソン島沖で直径約1メートル程度の小隕石が大気圏に突入して燃え尽きたケースのみです。
この隕石は事前に軌道が確認されており、地上に被害はありませんでした。「NASAが隕石を認めた」というのは、この小規模事例の話が誤って解釈され、未来の大災害と混同された可能性が高いと考えられます。
過去の事例から:
NASAやESAが過去に公表した「フィリピン沖での隕石落下事例」は、2024年9月にルソン島沖(フィリピン北部付近)の上空で発生した、小規模な隕石の大気圏突入です。
この隕石は直径が約1メートル程度で、NASAの地球近傍天体監視ネットワークによって軌道が事前に確認されていました。大気圏に突入した際に高温で燃え尽き、一部が発光して目撃されましたが、地上には破片は到達せず、被害報告も一切ありませんでした。
こうした現象は地球周辺では年に数回から十数回程度確認される自然現象です。小隕石の落下は決して珍しいものではなく、むしろ大半は夜間に発生し、人知れず燃え尽きています。今回のケースも規模は非常に小さいものでしたが、発光や振動が観測され、「珍しい現象が起きた」というニュースとして報道されました。
問題は、この報道がSNSや動画メディアで繰り返し取り上げられ、「NASAがフィリピンに隕石が落ちると認めた」「NASAが危険を警告していた」という表現に脚色されて拡散されたことです。さらに、「2025年7月5日に同様の、あるいはそれ以上の大規模隕石が落下する」という臆測が付け加えられ、たつき諒さんの予知夢と結びつけられました。
しかし実際には、NASAもESAも「将来的に同じ地域に危険な規模の隕石が落下する」とは一切述べておらず、今回の2024年9月の事例は、あくまで「無害な小隕石の燃焼現象」として記録されているだけです。
こうした経緯から、「NASAが隕石を認めた」という言葉だけが切り取られ、それが「2025年の大災害予言の裏付け」と誤認された可能性が高いと考えられています。SNSでは不安を煽る投稿が加速的に広まる傾向があり、根拠のない話題が「事実」と混同されやすいことが問題です。
正確な理解のためには、NASAやESAなど公的機関が発表する一次情報を確認し、情報の出所や規模を冷静に判断することが重要です。
公式機関の見解
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の藤本正樹所長は、メディア取材で「現時点ではそのような大型天体の落下予測は存在しない」と説明しています。NASAも大規模隕石衝突は数十年先まで観測体制を敷いており、1km級の隕石であれば数年以上前から把握できると公表しています。
NASAも同様に、地球近傍天体監視(Near-Earth Object Observations Program)を通じて、直径約140m以上の天体を重点的に追跡し、将来的な衝突リスクを長期的に評価しています。NASAの公式発表では、直径1km級の大規模隕石であれば、現行の観測技術で数年以上前から軌道が把握可能であり、もし危険が差し迫っている場合には国際的に警告が行われると説明しています。
さらに、ESA(欧州宇宙機関)も「スペース・シチュエーション・アウェアネス(SSA)」という取り組みの中で、数百m〜数kmクラスの天体を24時間体制で監視しています。もし地球への重大な衝突リスクが見つかった場合、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)や各国政府に速やかに情報が共有される仕組みが整っています。
こうした公的機関は、これまでにも実際に落下が予測される小規模天体(たとえば2023年にアフリカ上空で燃え尽きた小惑星など)を事前に発表してきました。つまり、観測体制は「事後ではなく事前に周知する」ことを基本としており、重要な情報を隠したり黙認することは国際合意に反するとされています。
今回の「2025年7月5日に隕石が落ちる」という噂についても、NASA、ESA、JAXAのいずれも公式なリスク情報を発表していません。藤本所長は「公的な観測記録と照合すれば、噂のような脅威は確認されていないと誰でも分かる」と説明し、冷静な情報収集と公式発表の確認を呼びかけています。
このように、公式機関は現在の監視体制をもってすれば地球規模の壊滅的な隕石衝突は長期的に把握できると明言しており、SNS上の噂には科学的根拠が一切ないことが再三強調されています。
✅ NASA Near-Earth Object Program(地球近傍天体監視プログラム)公式ページ
小惑星・隕石の監視情報、将来的な衝突リスクの公表について詳細が掲載されています。
🔗 https://neo.jpl.nasa.gov
✅ NASA Planetary Defense Coordination Office(惑星防衛調整室)公式ページ
「危険な天体は数年〜数十年単位で軌道把握が可能」という見解が明記されています。
🔗 https://www.nasa.gov/planetarydefense/overview/
✅ JAXA公式ニュース・藤本正樹所長コメントが紹介されるニュース記事例(参考報道)
※JAXA公式サイトでは所長コメントが随時更新されます。国内主要メディアの科学欄や宇宙ニュースもご確認ください。
🔗 https://www.jaxa.jp/
なぜデマが広がるのか?
・恐怖をあおる予言や陰謀論が拡散しやすい ・「NASAが認めた」という権威付けの言葉が人々を信じさせやすい ・SNSの拡散スピードが早い
これらの要因が組み合わさり、一見本物に見える噂が一気に広がりました。
なぜデマが広がるのか?
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恐怖をあおる予言や陰謀論は拡散しやすい
人は強い不安や恐怖を感じる情報に注目しやすい傾向があります。特に「巨大地震」「隕石衝突」「人類滅亡」といった終末的なテーマは、心理的に強烈なインパクトを持つため、SNSや動画の話題になりやすく、短時間で広範囲に共有されがちです。 -
「NASAが認めた」という権威付けの言葉が人々を信じさせやすい
NASAやJAXA、国連などの公的機関の名前を出すと、情報に信頼性があるように錯覚しやすくなります。実際には根拠のない話でも、「NASAが言ったら本当だろう」と思い込みやすく、一気に信憑性が増したように見えるのです。この“権威付け”が噂を後押しする大きな要因です。 -
SNSの拡散スピードが非常に早い
Twitter、Facebook、YouTube、TikTokなどでは「面白い」「怖い」「衝撃的」と感じる話題がアルゴリズムによって優先的に表示され、何万人もの目に届きます。一度拡散が始まると、投稿を見た人がさらにシェア・引用し、数時間のうちに世界中に広がることも珍しくありません。 -
部分的に事実が含まれていることで真実味が増す
今回の「NASAが隕石を認めた」という噂も、実際には2024年9月に小隕石が落下したという事実が背景にあります。しかし、その事実と「2025年に巨大隕石が落ちる」という全く別の話が意図的に混同されているため、あたかも一連の流れのように思わせる効果があります。部分的に正しい情報が混ざっていると、全体が信用できるように見えるのです。 -
不安を共有する心理が働く
人は恐怖や不安を感じたとき、「自分だけでなく他の人も備えた方がいい」と思い、善意で情報を拡散する場合もあります。この心理的な動機が、結果的にデマの広がりを加速させます。 -
検証よりも感情が優先される
SNSでは「怖い」「やばい」と感じた感情が先に立ち、事実確認をする前にシェアしてしまうケースが多いです。後から検証情報が出ても、最初に強い印象を残した噂が頭に残りやすい(アンカリング効果)ため、訂正が浸透しにくい問題もあります。
結論
2025年7月5日にフィリピン沖へ巨大隕石が落下するという科学的根拠は一切ありません。NASAもJAXAも認めておらず、実際に確認されたのは2024年9月の小隕石だけです。
不安を煽る情報に流されず、公式機関の発表や信頼できる報道を確認することが大切です。


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