時速194キロ死亡事故「最悪な判決」—控訴審が危険運転を否定した理由を整理
※本記事は、報道で判明している範囲の事実と裁判の争点を、一般向けに整理した解説です(特定個人への中傷を目的としません)。
1. 何が起きたのか(事件の概要)
2021年2月、大分県大分市の県道交差点で、時速194キロで走行していた車が右折しようとした車と衝突し、右折車の運転者(当時50歳)が死亡した事故です。
この事故をめぐり、運転していた被告(当時19歳)が 「危険運転致死罪」 で起訴され、1審(大分地裁)は危険運転を認めて実刑判決。 一方、控訴審(福岡高裁)は判断を覆し、危険運転ではなく「過失運転致死」 として量刑も引き下げました。
■一審の判断を破棄、「危険運転」認めず
事故で弟の小柳憲さん(当時50)を亡くした姉の長文恵さんは、判決後の会見で声を震わせました。
長文恵さん:
「メモには『4年半』としか書けませんでした。一番最悪な判決だったと思います」22日の控訴審判決で、福岡高裁の平塚浩司裁判長は、被告が車線に沿って直進できていたことなどをあげ、法律が定める「進行を制御することが困難な高速度」には該当しないとする弁護側の主張を支持。さらに検察側が主張していた「通行妨害の目的」についても、立証されていないとして退けました。
これにより、一審の裁判員裁判で大分地裁が認めた「危険運転致死罪」の成立を認めず、判決を破棄。より法定刑の軽い「過失運転致死罪」を適用し、被告に懲役4年6か月の実刑判決を言い渡しました。
■「市民感覚と司法がかけ離れている」
長文恵さん:
「実際にあの道路を封鎖して、同型の車で立証実験が可能かということを考えても無理に等しい。そういった立証をしなければ、危険な悪質な行為が認められないという現実を突きつけられました」一審の裁判員裁判では認められた「危険運転」。長さんは「市民感覚を反映した一審の判決が尊重されなかった」と悔しさをにじませました。
長文恵さん:
「一審が裁判員裁判という国民から選ばれ、意見を取り入れた判決だったことを考えると、一般市民感覚と司法がこれだけかけ離れているというのを改めて感じる判決だった」■「終わるという選択肢はない」
裁判のあと、遺族は上告して最高裁で争う意思を福岡高検に伝えました。
長文恵さん:
「このまま私が引き下がって納得してしまえば、今後の他の事案に影響すると考えたときに、私はこのままではいかないという気持ち。これで終わるという選択肢は、私の中にはない」出典:「最悪な判決」時速194キロ死亡事故、二審は“過失” 遺族が憤りの声 | 大分のニュース|OBS NEWS|大分放送 (1ページ)
2. 裁判の争点はどこだった?
今回の裁判の争点は、大きく2つでした。
争点①:時速194キロは「危険運転」に当たるのか
危険運転致死傷罪のうち「高速度」に関する類型では、 “進行を制御することが困難な高速度” で運転していたかどうかがポイントになります。
争点②:「妨害目的(あおり等)」があったのか
検察側は、速度だけでなく「妨害目的」も主張していました。
3. 1審(大分地裁)はなぜ「危険運転」と認定したのか
1審は、要旨として次のように判断し、危険運転致死罪を認めました。
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時速194キロという速度は、 ハンドルやブレーキ操作のわずかなミスで事故が起きうる危険性が高い
-
そのため “進行を制御することが困難な高速度” に当たる
この判断を前提に、被告に実刑判決が言い渡されました。
4. 控訴審(福岡高裁)は何を理由に「危険運転」を否定したのか(ここが本題)
控訴審のポイントは、危険運転成立の“根拠”をどこまで立証できたか にあります。
判断理由①:「進行を制御することが困難な高速度」—“立証が足りない”
福岡高裁は、1審が危険運転認定の根拠にした “進行を制御することが困難な高速度” について、
-
それを 肯定するに足りる立証がなされていない
とし、危険運転の成立を否定しました。
つまり「速かった」だけでは足りず、法律が求めるレベルで 「制御困難」だったことを裁判で証明しきれなかった、という構図です。
判断理由②:「妨害目的」—検察の主張も認めず
控訴審では検察側が「妨害目的」も主張しましたが、 高裁はこの点も 認めませんでした。
結果:危険運転ではなく「過失運転致死」へ
上の2点が崩れたことで、法的評価は
-
危険運転致死罪(より重い) → 過失運転致死(より軽い)
へと転換。 その結果、量刑も大きく下がりました。
5. 量刑はなぜ軽くなったのか(懲役8年→4年6か月)
一般論として、
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罪名が「危険運転」から「過失」へ変わる
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適用される法定刑(上限や枠組み)が変わる
この2点が、量刑差に直結します。
今回も、危険運転が否定されたことで、最終的に 懲役4年6か月 が言い渡されました。
6. 遺族が「最悪な判決」と憤った背景
報道によれば、遺族は判決後の会見で
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「想像の中では一番最悪な判決」
-
「危険で悪質な行為が認められない現実を突き付けられた」
と述べています。
また、判決理由をメモしようとしたものの、 「ことごとく認められていないのでペンを止めた」という趣旨の発言も伝えられました。
7. 今後の焦点:上告の可能性と“危険運転の線引き”問題
(1)上告の可能性
刑事裁判では、控訴審判決のあと、最高裁に争点が移る場合があります。 ただし上告には手続き上の要件があり、どこまで争えるかが注目点です。
(2)制度面:危険運転の「立証ハードル」の議論
今回のように
-
“制御困難”をどう証明するか
-
速度や飲酒をどう線引きするか
が難しく、 「危険運転の適用がブレる」問題が繰り返し指摘されてきました。
そのため国の審議の場では、 速度・飲酒について数値基準を設ける方向の議論 も進んでいます。
8. まとめ(ポイントだけ)
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事件は「時速194キロでの死亡事故」
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1審:危険運転を認め実刑
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2審:
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「制御困難な高速度」の立証が足りない
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「妨害目的」も認めない → 危険運転を否定し、過失運転へ
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罪名が変わった結果、量刑も引き下げ
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今後は上告の動きと、危険運転の線引き(制度改正議論)が焦点
よくある疑問(Q&A)
Q1. 「194キロ」はそれだけで危険運転にならないの?
A. 直感的には危険でも、刑事裁判では法律が求める要件を満たすかと、 それを証拠で立証できたかが問われます。
Q2. じゃあ危険運転の法律は機能していない?
A. 「機能していない」と断じるのは早いですが、 “線引き”が難しく、適用が割れるケースがあるのは事実で、 それが数値基準などの議論につながっています。
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