小学校に入学する前、4階建てアパートのベランダから突き落とされそうになった恐怖体験があり、その出来事は現在でも鮮明に記憶に刻まれているといいます。

食事中に母親から熱い味噌汁をかけられたこともあり、肉体的苦痛だけでなく、愛情を拒絶されたという心理的ダメージが深く残ったそうです。

父親からも無言の暴力を受け、理由も告げられず殴られ、蹴られた経験は数えきれないほどあると語っています。

こうした虐待の状況から逃れようと、彼女は児童相談所に助けを求めましたが、十分な対応はなされなかったといいます。

職員からは「もう少し様子を見ましょう」といった曖昧な対応がなされ、家庭内の深刻な状況が軽視されたまま終わってしまったことが、自分だけでなく他の子どもたちにも共通する「制度の限界」だと感じたと述べています。

平野さんは、制度そのものが家族単位での問題に踏み込むことに躊躇しすぎていると強く批判しており、「虐待の現場にいる子どもは、今日を生き延びられるかの瀬戸際にいる。時間的猶予などない」と訴えています。

幼少期の名前「鈴子」は、母親に何度も怒鳴られた際に呼ばれた名前でもあり、その響きを聞くたびに過去のトラウマがよみがえるため、自分自身を守るためにも改名を決断したそうです。

2021年、「雨の日でも龍のように力強く生きる」という思いを込めて「雨龍（うりゅう）」と名乗るようになり、それは新たな人生への再出発の象徴でもあります。

成人後は実家を離れ、経済的にも精神的にも自立する道を選びました。当初は生活に苦労しながらも、過去の経験を糧に、人権や社会制度に対する問題提起を積極的に行うようになっていきました。

平野さんは、自身の経験から「虐待を受けて育った人々が、過去を恥じず、声をあげられる社会」を作ることが必要だと強く訴えています。

「虐待育ち」は個人の責任ではなく、構造的な無関心と制度の欠陥によって生まれてしまう現実であり、それを変えるには社会全体の理解と共感が欠かせないとしています。

彼女はまた、政策提案や講演活動を通じて、子どもたちを守る制度の充実、児童福祉人材の育成、通報体制の強化などを訴えており、それは単なる告白にとどまらない「社会改革」の一歩だといえます。

特に注目すべきは、「虐待サバイバー同士の連帯」にも言及している点で、「一人じゃない」「自分の声は誰かの救いになる」と発信し続ける姿勢が、多くの共感を集めています。